野呂邦暢

『白桃 野呂邦暢短篇選』には長崎原爆をテーマにした「藁と火」が収録されている

今月、みすず書房から出た『白桃 野呂邦暢短篇選』には単行本未収録の「藁と火」が収録されている。『丘の火』クラスのボリュームがあるという『解䌫の時』が未公表の現在、唯一の原爆ものということになる。未読メモ。

野呂邦暢の伊佐高ワールド

『文彦のたたかい』は架空の高校、県立伊佐高校を舞台にしている短編集だ。ただし、「文彦のたたかい」と「うらぎり」以外は「伊佐高校」の名称は出てこない(『水瓶座の少女』は北高が舞台だった)。基本は片思いの男女高校生たちの話だが、大人にも存在感…

『文彦のたたかい』(野呂邦暢)を読み終えた

昭和53年2月20日集英社発行滝本竜彦の『ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ』のような学園戦闘モノを妄想していたら……。 転校生の美少女麻生明子。その麻生をぼくら美術部のモデルにたのんだまではよかったがある日親友の寺田がぼくに告白した。この一…

野呂邦暢の未発表大作『解䌫の時』

昨日触れた『彷徨と回帰―野呂邦暢の文学世界』(中野章子著/平成7年5月13日/西日本新聞社発行)は、野呂邦暢の単行本未収録作品をリストアップしているのが貴重だが、活字になっていない未発表大作の存在についても言及している。それは、原爆をテーマにし…

『彷徨と回帰―野呂邦暢の文学世界』(中野章子)

「本はねころんで」さんの「2010-05-02 本日は野呂祭り3」で『彷徨と回帰―野呂邦暢の文学世界』(中野章子著/平成7年5月13日/西日本新聞社発行)を知る。また、中野さんが「朱雀の洛中日記」というブログをやっていることも知る。近所の図書館に同書があ…

野呂邦暢の『夕暮の緑の光』未収録の『小さな町にて』

『小さな町にて』(野呂邦暢)を読んだ。奥付には「文藝春秋 昭和57年5月10日第1刷 著者 野呂邦暢(著作権継承者 納所アキノ)とある。昭和55年9月に発行された『丘の火』の著作権継承者は納所長雄だった。フィリップの『小さな町にて』にインスパイアされた…

『落城記』(野呂邦暢)のカバー

単行本と文庫本のカバー。文庫本になったとき、龍造寺軍が追加されている。 単行本の笛は、兄、七郎のもの。懐剣は於梨緒のものだろう。

『落城記』(野呂邦暢)を読み終えた

先日、「読書で日ぐらし」さんの『小林信彦と野呂邦暢』というエントリーで亡くなる前の野呂が毎月500枚書いていたことを知った。『落城記』と『丘の火』を同時に書いていた頃の話だ。この2作品を同時執筆というのは、何かが乗り移ってないと無理だろうと素…

『昔日の客』(関口良雄)が復刊されるらしい

野呂邦暢の話で必ず引き合いに出される『昔日の客』(関口良雄)。夏葉社が復刊するようだ。 TLを読むと、版画を付けるのは難しいらしい。だが快挙である。この本は、あちこちで紹介されてきたが、本当に、いい話と面白い話しか載っていない。ただ、私と同じ…

『丘の火』(野呂邦暢)の主な登場人物

伊奈伸彦:東京で金融の業界紙で記者をやっていたが、結婚を機に妻の英子の実家がある伊佐市に転居。伊佐市では印刷会社の有明企画に就職するが首になる。父親はG島で戦死。菊池省一郎から省造の戦記を完成させ本にするという仕事を依頼される。 伊奈伸郎:…

野呂邦暢が好きだったというFranckを聴いてみた

中古CD屋で見かけたので買って聴いている。はたしてこのフランクかどうか、自信がないがほかにフランクはいないだろう。Wikipediaを見ると、1825年 - 1891年。 最晩年の1885年頃からヴァイオリンソナタ イ長調(同郷のヴァイオリニスト、イザイのために書い…

『丘の火』(野呂邦暢)を読み始めたらこれが面白い

奥付から「文藝春秋 昭和55年9月30日第1刷発行 著者 野呂邦暢(著作権継承者 納所長雄)」。解題から「文學界昭和53年2月号より昭和55年4月号まで連載(うち昭和54年10月号は休載)」。最後から二番目の小説。何が面白いって、これまでの野呂ワールドの住人…

『水瓶座の少女』(野呂邦暢)を読み終えた。

集英社文庫昭和54年7月14日第1刷発行。カバー表2に、あらすじが書いてある。 「おまえがなんといって止めても、俺の布由子に対する気持は変わらない」孝志はそういい残して親友の和太留と分かれた。だが布由子は自殺未遂を起こした。なぜ布由子が死のうとし…

『諫早菖蒲日記』は野呂邦暢の最高傑作ではないだろうか

やっと読み終わった。『諫早菖蒲日記』は野呂邦暢の最高傑作ではないだろうか。舞台を幕末にしたこと、ぶつぎりのエピソード集にしてそれぞれの文体の完成度を高めたことで「未来の読者」に向かって語りかけることに成功している。3年後に急死するなど予想も…

『諫早菖蒲日記』(野呂邦暢)を読み始めたが……

『諫早菖蒲日記』(野呂邦暢)は読了まで時間がかかりそうだ。まずは、第1章を読了。帯にはこうある。 幕末――九州諫早藩の砲術指南の十五歳になる少女のみずみずしい青春の感性を透明な文体で描く純文学長篇! ストーリーといえるものはなく、15歳の志津の目…

『猟銃』(野呂邦暢)を読み終えた

集英社から1978年12月10日初版発行。この短編集の特徴は本の帯にあるとおりだった。 けだるさの支配する男と女の時間にくっきりと形どられる透明な悲哀! 生きていることの後ろめたさ。生活が、ザルに水を汲む作業のようにさえ思えてくる毎日――妻の愚痴が、…

『愛についてのデッサン―佐古啓介の旅―』(野呂邦暢)を読み終えた

出版社は角川書店。昭和54年7月25日初版発行。「野生時代」の1978年7月号から12月号に掲載したものをまとめた連作短編集だ。みすず書房から4年前に再刊されている。 アマゾンの解説にはこうある。 古本屋の若き主人、佐古啓介が、謎めいた恋や絡みあう人間模…

『古い革張椅子』(野呂邦暢)を読み終えた

1979年9月10日第1刷。集英社発行。1976年〜1978年の間、西日本新聞を中心に掲載された60本ほどのエッセイを集めた本。古代史マニアだったことを知る。山王書房のことは「S書房主人」というエッセイに書かれている。入手する前にあちこちの古本屋で手にとって…

『ふたりの女』(野呂邦暢)を読み終えた

集英社、1977年12月10日初版発行。帯にはこうある。「そうか、おまえも淋しいのか」収録作品は4点。初出が書かれていないのが残念である。 ふたりの女 伏す男 回廊の夜 とらわれの冬 「ふたりの女」は「女の話」。「伏す男」と「回廊の夜」は「病院の話」。…

『一滴の夏』(野呂邦暢)を読み終えた

入手したのは、文藝春秋発行の単行本で、昭和51年4月10日第1刷。収録作品の初出は以下のとおり。 「恋人」風景 昭和49年3月号 「隣人」オール讀物 昭和50年1月号 「八月」文学界 昭和48年10月号 「高く跳べ、パック」 文學界 昭和50年8月号 「鳩の首」 別冊…

『王国そして地図』(野呂邦暢)に貼った付箋から

不思議なことに付箋を貼ったらすいすい読めた。一部を転記する。まずは、列車でいっしょになった客は覚えているものだ、というエッセイ。 歩廊の眺め(西日本新聞、1976年6月22日) 私が探しているのは彼らではない。やはり居た。見送り人からやや離れた位置…

野呂邦暢の『水瓶座の少女』を入手した

高尾、西八王子、八王子、豊田、立川、国立と中央線の古本屋をまわった。そのうちの1軒で、野呂邦暢の『水瓶座の少女』(集英社文庫、コバルトシリーズ、昭和54年7月14日第1刷)を入手したが、多和田葉子はなかった。 - 下記ブログを手がかりに東横線沿線も…

『王国そして地図』(野呂邦暢)を読み始めた

古本屋で「野呂邦暢はあるか?」と尋ねると、在庫の有無を問わず、店主が年配の男性の場合はほとんどがファンであったと明言する。そして「あの人の随筆はよかった。今はもう、あのくらい書ける人はいない」という。ということで読み始めた『王国そして地図…

野呂邦暢の「砦の冬」(『草のつるぎ』所収)を読み終えた

時代的には『RAINBOW-二舎六房の七人-』とほぼ同時期。昭和30年代の二十歳前後の若い男たちばかりが出てくる。自衛隊の訓練話が中心だから、とにかく体を動かす。冬山に兎狩に出かけ道に迷った(というか遭難した)海東二士がみる夢は、そこだけ切り出すとた…

『草のつるぎ』の第2部「砦の冬」(野呂邦暢)を読んでいるが……

昨日は電車の中でしか本を読めなかったので、文庫版を携帯した。講談社文芸文庫の野呂邦暢はこれ1冊のみ(2002年7月10日発行)。表紙に作品集とあるように、「狙撃手」「白桃」「日が沈むのを」「草のつるぎ」「一滴の夏」が収録されている。文芸春秋の文庫…

『草のつるぎ』(野呂邦暢)を読み始めた

「自衛隊員」を主人公にした小説を読んだのは初めてだ(映画やアニメではよくある)。本書は昭和48年(1973年)下半期の第70回芥川賞を受賞している。同時受賞は森敦の『月山』。滝井孝作は、野呂の作品をこう評している。 野呂邦暢氏は、前回に「鳥たちの河…

『鳥たちの河口』(野呂邦暢)を読んだ

入手したのは1刷ではなく2刷。帯を見ると「草のつるぎ」で芥川賞を受賞した後のようだ。奥付には以下のように印刷されている。 文藝春秋 昭和48年9月30日第1刷 昭和49年5月10日第2刷 1973年、74年というと私は洋楽ロックに夢中だった。74年は、たしか、エリ…

『海辺の広い庭』(野呂邦暢)を読んだ

『海辺の広い庭』野呂邦暢 昭和48年3月10日(1973年)文藝春秋発行 http://amzn.to/bqgTs0本書に収められているのは、「海辺の広い庭」「不意の客」「歩哨」「狙撃手」「或る男の故郷」の5編。付箋を貼ったのは一箇所のみだった。 職業安定所のベンチで呼び…

『十一月 水晶』(野呂邦暢)の付箋から

『十一月 水晶』野呂邦暢 昭和48年2月28日(1973年)冬樹社発行 http://amzn.to/dkE6Mj本書には、「十一月」、「水晶」、「日常」、「朝の光は……」、「白桃」、「日が沈むのを」、「壁の絵」の7つの短編小説が収録されている。野呂にとっては処女作品集だっ…

野呂邦暢の『十一月 水晶』を読んだ

1973年、冬樹社発行。感想を書くため、(心ではなく)頭に響く文章があったページに付箋を貼ってみた。近々に、メモがわりにアップする予定。ページは忘れないだろうが、どの文章か、覚えていられるか少々不安である。 箱がパラフィン紙で巻かれているのでシ…