『一滴の夏』(野呂邦暢)を読み終えた

入手したのは、文藝春秋発行の単行本で、昭和51年4月10日第1刷。収録作品の初出は以下のとおり。

「恋人」風景 昭和49年3月号
「隣人」オール讀物 昭和50年1月号
「八月」文学界 昭和48年10月号
「高く跳べ、パック」 文學界 昭和50年8月号
「鳩の首」 別冊文藝春秋 昭和50年夏季号
「冬の皇帝」文學界 昭和50年4月号
「一滴の夏」 文學界 昭和50年12月号

時は昭和31年。「冬の皇帝」は東京下町のガソリンスタンドで働く主人公の、「草のつるぎ」の数ヶ月前の話。「一滴の夏」は諫早でぶらぶらしている主人公の、「草のつるぎ」の数ヶ月後の話。「冬の皇帝」の文章からは、石油ストーブ特有のあのニオイが、「一滴の夏」からは日照りが続く山の中の草と土のニオイが漂ってくる。

野呂邦暢の作品中の幻覚描写について関心を持った。「草のつるぎ」では、遭難時に見たウサギを料理するユーモラスな幻覚が描かれたが、「冬の皇帝」では、主人公は宿無しのため歩き続け、幻覚を見る。いつか、追記しよう。

これまで読んだ野呂邦暢の小説は、大体4種類に分類できるかもしれないと思ったのでメモ。

  1. 女(との生活)の話
  2. アパートの隣人の話
  3. 病院の話
  4. 著者を投影した海東君の話