『落城記』(野呂邦暢)を読み終えた

先日、「読書で日ぐらし」さんの『小林信彦と野呂邦暢』というエントリーで亡くなる前の野呂が毎月500枚書いていたことを知った。

『落城記』と『丘の火』を同時に書いていた頃の話だ。この2作品を同時執筆というのは、何かが乗り移ってないと無理だろうと素人ながらに思う。

解題にはこうある。

本作品の母体となった「落城記」は文学界昭和五十四年十月号に発表された。大はばの推敲、九十四枚の加筆原稿を得た本作品が脱稿したのは著者の死(昭和五十五年五月七日)の直前であった。

『落城記』は『諫早菖蒲日記』と同じ諫早が舞台。ただし、時代は戦国時代に遡り、諫早の主であった西郷家が龍造寺家に滅ぼされる数日間の出来事、という設定だ。主人公の名は、於梨緒(おりお)。菖蒲日記同様、娘の視点で語られるが、於梨緒は妾の子である。乳が大きく、弓を使うのに邪魔だというアマゾネスタイプの戦う女だ。戦闘美少女でいえば、キューティーハニーの系譜か?

時代小説は全くといってよいくらい読んだことがないので、次の2点に感心した。糞尿を煮立て城を攻めてくる龍造寺軍にぶちまけるところ。兵糧をきちんと計算するところ。理にかなっているから、実際、そうだったのかもしれない。

諫早市のWebに昭和54年当時の諫早方言Windows Media)がアップされている。