『昔日の客』(関口良雄)が復刊されるらしい

野呂邦暢の話で必ず引き合いに出される『昔日の客』(関口良雄)。夏葉社が復刊するようだ


TLを読むと、版画を付けるのは難しいらしい。だが快挙である。この本は、あちこちで紹介されてきたが、本当に、いい話と面白い話しか載っていない。ただ、私と同じ「古本」姓の人の話はどこにも紹介されていないと思うので、メモっておく。

某月某日 夜、六、七年前に広島に転任した古本さんから珍しく電話があり、広島には古い本が少なくさびしくて仕方がないから棚の本を片っぱしから読んで呉れといふ。雑本の文学書ばかりになつてしまつたから読んでも仕方が無いからと断つても、どうしても読んで呉れといふ。気のすすまないままに五十冊ほど読み上げる。このくらいでどうでせうといつたら、どうも有難う。成るほど雑本ばかりになつたねえと、同じ事を繰り返す。あまり繰り返すのでいい気持がしなくなつた。左様ならとこちらから電話をきる。女房と顔を見合わせて苦笑する。この人東京在住の頃、古元といつてゐたが、そのうち姓は古本と書くのが本当だといふことが判つた。


当時、電電公社の電話は、何分、何時間、話しても10円だったと記憶している。

「馬込文学マラソン」のコンテンツに野呂に触れた「昔日の客」が紹介されている。