野呂邦暢の未発表大作『解䌫の時』

昨日触れた『彷徨と回帰―野呂邦暢の文学世界』(中野章子著/平成7年5月13日/西日本新聞社発行)は、野呂邦暢の単行本未収録作品をリストアップしているのが貴重だが、活字になっていない未発表大作の存在についても言及している。

それは、原爆をテーマにした『解䌫の時(かいらんのとき)』だ。1000枚に及ぶらしい。『丘の火』と同等のボリュームだ。野呂が亡くなった後、彼の母親から編集者に渡された、とある。

主人公は二人。爆心地の復元地図にとりかかっている、死刑を宣告された被爆者。ロシアのアナキストたちの発行していた新聞をさがしている、東京で食い詰めた週刊誌のルポライター

今後、野呂邦暢の再評価が進んでいき、同書の発刊に結びつけば嬉しい。