読書

第一書房 今日の詩人叢書

第1 文学 ポオル・ヴァレリイ詩論 堀口大學訳 昭和5年第2 三好達治 測量船 昭和5年第3 岩佐東一郎 航空術 昭和6年第4 城左門 近世無頼 昭和5年第5 田中冬二 海の見える石段 昭和5年第6 青柳瑞穂 睡眠 昭和6年第8 菱山修三 懸崖 昭和6年 第7は欠番?

この本は知りませんでした

『一億人から離れてたつ異貌の画家菅井汲の世界―菅井汲vs吉行淳之介・原広司・北川フラム』 (現代企画室、1982年)。2005年に復刊されているようです。

思潮社 ラ・メール選書

鈴木ユリイカ『MOBILE・愛』(1985)第36回H氏賞 新藤涼子『薔薇ふみ』(1985)第16回高見順賞 中本道代『四月の第一日曜日』(1986)第11回現代詩女流賞候補 笠間由紀子『樹の夢』(1987) 国峰照子『玉ねぎのBlack box』(1987) 柴田千秋『濾過器』(1989…

思潮社 叢書・女性詩の現在

伊藤比呂美『青梅』(1982) 白石公子『ラプソディ』(1982) 井坂洋子『Gigi』(1982)第33回H氏賞受賞 松井啓子『のどを猫でいっぱいにして』(1983)第8回現代詩女流賞候補 榊原淳子『世紀末オーガズム』(1983) 岩崎迪子『花首』(1984) 平田俊子『ラ…

私はみた 梅崎春生

青空文庫に未収録なのでここに掲載。底本は『幻化の人・梅崎春生』(東邦出版社、1975)。初出は「世界」(1952年7月号)。「血のメーデー事件」参照。※ ※ ※私はみた 梅崎春生 デモ隊第一波の先頭が、馬場先門に着いた時、そこからすこし広場に入ったところ…

慰安/林芙美子

わたしはこひの歌を美しくうたつてみやうとおもつたけれどもうわたしの聲は美しくなかつた疲れてしやがれて家鴨のやうな聲だつたわたしがこひの歌をうたほうとするとみんな腹をかゝえて笑つたわたしも笑つたいかにもおかしいと云ふやうにわたしは泣きながら…

小穴隆一著『二つの絵』(中央公論社、昭和31年)

芥川龍之介(1892〜1927)の親友、洋画家の小穴隆一(1894〜1966)による回想録(カバーは本人だが、装幀は自装ではなく恩地孝四郎)。芥川が自殺してから約30年たってからの出版だが、過去に書き散らした回想的な短い文章をまとめたもので、重複する内容の…

小田嶽夫著『文学青春群像』(南北社、昭和39)

小田嶽夫(1900〜1979)は新潟高田出身。東京外語学校支那語科(現外語大)卒業後、外務省勤務。本格的に作家を目指したのは1930年に外務省を退職してから。したがって、同時代の作家予備軍の中では年上のほうだった。 本書は小田が1936年に「城外」で第3回…

伊藤整著『変容』(岩波文庫、1983)

「生きている間は、何が起るか分らない」という言葉が、つぶやきとなって私の口にのぼった。それは「生きている間は何をするか分らない」と言った方が正確だった。私にとってその言葉は、「生きているうちは救いなどありはしない」という意味だった。 『鳴海…

澤野起美子著『詩集冬の桜』(昭森社、1972)

本の整理をするたびに、これは捨てられないなぁ……と思う詩集である。土井晩翠賞受賞だからではない。著者の動機にある。 夫がガンと診断されたのは八年前で、わたくしが詩の道にはいったのも、その頃でした。さいわい夫は手術の経過がよくて、鶴のように痩せ…

伊藤整著『鳴海仙吉』(岩波文庫、2006)

澤田繁晴著『炎舞 文学・美術散策』で引用されていた、伊藤整の「鳴海仙吉」を岩波文庫で見つけたので読んでみた。底本は新潮文庫版(1956年初版、1972年16刷)。親本は1950年に細川書店から出た単行本だろう。 500ページ強もあるので腰が引け、読む前にネッ…

日本の母 春陽堂 昭和18年4月18日発行/同年10月20日再版(15000部)

読売新聞と日本文学報国会のタイアップ企画本『日本の母』。日本文学報国会は「国家の要請するところに従って、国策の周知徹底、宣伝普及に挺身し、以て国策の施行実践に協力する」ことを目的とした社団法人(Wikipedia)。日本各地の読売新聞関係者が選んだ…

二反長半著『青桐の床屋と燕』(崙書房、1970)

川端康成が帯文を書いていて判型が変わっている(B5)『青桐の床屋と燕』。著者の二反長半(1907〜1977)は「にたんおさ・なかば」と読む。本名は二反長半二郎で「にたんちょうはんじろう」。初めて見る名前だったが、Wikipediaを見ると、児童文学者として多…

福永武彦著『告別』(講談社、1962)

単行本の『告別』は、「告別」(初出は「群像」1962年1月号)と「形見分け」(同1961年3月号)の二編を収録し、1962年4月に発行された。菅野昭正による解説付の講談社文庫版はその11年後、1973年4月に発行されている。単行本は正字・歴史的仮名遣いで、文庫…

澤田繁晴著『炎舞 文学・美術散策』(龍書房、2013)

龍書房というのは室生犀星の最晩年の弟子である葉山修平の本を沢山出版している本屋で、葉山が室生犀星学会の会長を務めている関係か、犀星学会員の著書をよく見かける。『炎舞 文学・美術散策』の著者の名前も初めて見たが、川端康成学会、室生犀星学会、芸…

清家雪子『月に吠えらんねえ』(アフタヌーンKC、2013〜)

Twitter上で評判を知り、清家雪子(せいけゆきこ)『月に吠えらんねえ』(アフタヌーンKC)を読んでみた。萩原朔太郎を中心とする近代詩人たちの作家論をコミック形式で展開しているものと受け止めた。アマゾンレビューで高評価を付けている人たちとは違って…

放送随筆―お休みの前に(NHK編、1953)

1951〜1952年までの2年間、NHKラジオ放送用に執筆された随筆500編の中から105編を選んだのが『放送随筆』。105編は、安藤鶴夫、向井潤吉、式場隆三郎、河竹繁俊、平山蘆江、小絲源太郎、大町文衛、田辺尚雄、福田清人、石川欣一、中村白葉、木村荘八、内田亨…

山本健吉著『十二の肖像画』(講談社、昭和38)

山本健吉(1907〜1988)が、慶応大学在籍時に原民喜らと同人誌を作っていたということを最近になって知った。山本の名前を知った頃は、俳句・短歌関係の著書ばかり目にしていた。したがって、そっち方面の評論家かと思い込んでいて、気にも止めなかったが、…

船山馨著『旅の手帖』(青娥書房、1976)

札幌生まれの作家、船山馨(1914〜1981)の薄い随筆集。妻の春子が後を追うように8月5日の同日夜に亡くなった、ということは新聞で目にした。八木義徳のエッセイで、船山が酷いヒロポン中毒になったが立ち直ったことも読んでいる。が、船山の文章は読んだこ…

中山義秀による岩野泡鳴感想文(「文庫」昭和18年5月号)

昭和18年5月号の「文庫」(三笠書房)で、中山義秀(1900〜1969)が岩野泡鳴(1873〜1920)について書いている。このとき、中山は初めて岩野泡鳴の「泡鳴五部作」を読んだ。中山は1900年生まれだから、昭和18年には43歳。意外と遅く読んでいる。中山は、泡鳴…

読書:天児直美

年末、リンクを辿っていて江馬修(1889〜1975)という作家を知った。戦前、中国で一番知られていた日本の作家だという。 Wikipediaには1972年に50歳年下の天児直美といっしょになったとあり、興味を持った。 どんな老後を送ったのだろうか? また天児直美は5…

加藤周一が嫌ったマクルーハンとは

加藤周一の言葉が気になって、立ち読みではあるが、機会があればマクルーハンの本を読んでいる。「『オーディオ・ビジュアル』の情報が、活字情報を駆逐する時代が来た、という人がいます。しばらく前にマクルーハンというハッタリ屋が、そういうデマをとばし…

加藤周一の『読書術』

先日、国立を散歩していたとき、古本屋で加藤周一の『読書術』を見つけた。小学生のときに読んだ多湖輝の『頭の体操』シリーズと同じ光文社のカッパ・ブックスだ。あの加藤周一がこんな本を出していたのかと驚き読んでみた。すると、これが古臭くない。奥付…

『きつね月』(多和田葉子)は濃縮チョコレートのような短編集

新書館 1998年2月25日 初版第一刷多和田葉子の『きつね月』は、18の短編を収録。「ねつきみ」のみ書き下ろしで、そのほかは『大航海』連載(1994年12月〜1997年10月)に連載されたものだ。大半は、一粒食べると胃がもたれる濃縮されたチョコレートのようで、…

『ゴッドハルト鉄道』(多和田葉子)を読み終えた

『ゴッドハルト鉄道』1996年5月30日第1刷(講談社)を家で、『ゴッドハルト鉄道』2005年4月10日第1刷(講談社文芸文庫)を電車の中で読んだ。初出は以下のとおり。 ゴッドハルト鉄道 「群像」 1995年11月号 無精卵 「群像」 1995年1月号 隅田川の皺男 「文学…

『聖女伝説』(多和田葉子)は『三人関係』の変奏だろう

初出:批評空間II-1(1994年4月)からII-9(1996年4月)に連載 1996年7月10日発行(太田出版) 装幀・造本=菊池信義『聖女伝説』では「わたし」、「鶯谷」、その他の人物たちとの三人関係が描かれる。眼科医の父を持つ主人公の「わたし」は聖女になりたい女…

多和田葉子の『文字移植』は面白かった!

カナリア島はアフリカの北西にあって常夏の楽園らしい。翻訳を生業としている、中年というにはまだ少し若い女主人公がその島に数日間滞在し、締め切りの迫った翻訳作業をする。翻訳は「創作する」というのと少し異なるが、それでも仕事中はプチ錯乱状態にな…

多和田葉子の『犬婿入り』を読み終わった

10年ぶりの再読だが、今回のほうが楽しめた。読み方が変わったのだろう。 ペルソナ 「群像」 1992年6月号 犬婿入り 「群像」 1992年12月号 「ペルソナ」に、上手いと思った表現がいくつかあったので2つほど抜き出してみる。 中国がそんなにのんびりとしたと…

多和田葉子の『三人関係』を読み終わった

『三人関係』の奥付は、1992年3月12日第一刷 講談社。収録作品は、 かかとをなくして「群像」1991年6月号 三人関係「群像」1991年12月号 の2つで、「かかとをなくして」は1991年の第34回群像新人文学賞を受賞している。当時の審査員は、柄谷行人、田久保英夫…

野呂邦暢の伊佐高ワールド

『文彦のたたかい』は架空の高校、県立伊佐高校を舞台にしている短編集だ。ただし、「文彦のたたかい」と「うらぎり」以外は「伊佐高校」の名称は出てこない(『水瓶座の少女』は北高が舞台だった)。基本は片思いの男女高校生たちの話だが、大人にも存在感…