中山義秀による岩野泡鳴感想文(「文庫」昭和18年5月号)

昭和18年5月号の「文庫」(三笠書房)で、中山義秀(1900〜1969)が岩野泡鳴(1873〜1920)について書いている。このとき、中山は初めて岩野泡鳴の「泡鳴五部作」を読んだ。中山は1900年生まれだから、昭和18年には43歳。意外と遅く読んでいる。中山は、泡鳴の生活態度を賛美する者でも羨望する者でもないが、五部作には感嘆したとの感想を記す。

「泡鳴五部作」の後半は北海道が舞台である。中山は北海道地図を広げながら主人公(義雄)の紀行の跡を追う。中山は自ずと国木田独歩も北海道について書いているのを思い出す。たった5日だが、札幌に滞在して「空知川の岸辺」を記している。

「泡鳴、独歩ともに詩人であり、ともに北海道を写していながら、泡鳴の風景描写は乾いていて、独歩の詩情の深い名文と比べると、かなり軒輊があるように感じられた。つまり泡鳴は、詩人であり、ロマンチストには違いないが、詩情の豊かさというような点では、独歩に及ばない。代わりに独歩より遥かに強靭な散文精神を抱いている」(現代仮名遣いに修正)

この号に掲載されている創作は、鶴田知也「吹雪の丘」(単行本未収録)、上林暁「二階の歌」(全集第4巻収録)等がある。

読者投稿は詩、短歌、俳句。選者はそれぞれ、尾崎喜八土屋文明、飯田蛇笏。一等は5円、二等は3円、三等は1円の図書券

映画の広告はこのほかに近日公開として「北方に鐘が鳴る」が載っている。

中山義秀Wikipedia
岩野泡鳴(Wikipedia)