清家雪子『月に吠えらんねえ』(アフタヌーンKC、2013〜)
Twitter上で評判を知り、清家雪子(せいけゆきこ)『月に吠えらんねえ』(アフタヌーンKC)を読んでみた。萩原朔太郎を中心とする近代詩人たちの作家論をコミック形式で展開しているものと受け止めた。
アマゾンレビューで高評価を付けている人たちとは違って、私は感覚的にさっと入り込むことはできなかった。恩地孝四郎の描いた晩年の朔太郎、ちょび鬚を生やした北原白秋のイメージが強かったせいだろう。
再読が必要と感じられたが、すぐに、情報としての気付きがあった。生年と没年、そして本名である。
- 北原白秋/本名:北原隆吉/1885(明治18)年1月25日〜1942(昭和17)年11月2日
- 萩原朔太郎/1886(明治19)年11月1日〜1942(昭和17)年5月11日
- 室生犀星/本名:室生照道/1889(明治22)年8月1日〜1962(昭和37)年3月26日
- 石川啄木/本名:石川一/1886(明治19)年2月20日〜1912(明治45)年4月13日
- 高村光太郎/本名:高村光太郎(みつたろう)/1883(明治16)年3月13日〜1956(昭和31)年4月2日
朔太郎と犀星が弟子入りした白秋は、朔太郎のたった1才の歳上。石川啄木と朔太郎は同じ年の生まれ。そして、朔太郎だけは「あれは詩人としての●●が書いていることで、生身の俺じゃない」という言い訳ができない。
それにしても、顔の無い男として時空を彷徨う室生犀星が格好良すぎる。くち髭を生やしてエラの張った大村崑のような室生犀星、詩と俳句を取ったら強姦魔にしか見えないような上京前の野性的な室生犀星、どちらも選ばなかったのは正解だろう。