『聖女伝説』(多和田葉子)は『三人関係』の変奏だろう

初出:批評空間II-1(1994年4月)からII-9(1996年4月)に連載
1996年7月10日発行(太田出版
装幀・造本=菊池信義

『聖女伝説』では「わたし」、「鶯谷」、その他の人物たちとの三人関係が描かれる。

眼科医の父を持つ主人公の「わたし」は聖女になりたい女だ。話は「わたし」が9歳のころから始まる。そして、高校生のときに新興宗教に入信させられそうになり、儀式の途中で抜け出して、施設の窓から飛び降りるところで終わる。「わたし」は聖女になりたいぐらいだから、言葉そのものが、心理や肉体の動きにどう作用するかということに敏感である。作品全体を通してみれば「宗教の言葉使い」のパロディに溢れていて、何度も笑っているうちに読み終わっていた。

アマゾンの内容説明にはこうある。

「少女」から「美しき死」が奪い去られてしまったら、「少女」はいったい誰になるのか。オフィーリアの系譜に決別する画期的な少女小説の誕生。性と生と聖の少女小説

おっと。全然違う読み方だ。たぶん、私が間違っているのだろう。批評空間 (第2期第9号)の特集は「ドゥルーズと哲学」。『聖女伝説』はコーヒーブレーク的存在だったのでは?

「トローンボーンのソの音が鳴る」が良いね。