小田嶽夫著『文学青春群像』(南北社、昭和39)

小田嶽夫(1900〜1979)は新潟高田出身。東京外語学校支那語科(現外語大)卒業後、外務省勤務。本格的に作家を目指したのは1930年に外務省を退職してから。したがって、同時代の作家予備軍の中では年上のほうだった。

本書は小田が1936年に「城外」で第3回芥川賞を受賞する頃までの自伝。小田嶽夫は、書物展望社か朱雀書林の『芥川賞全集』の『城外』、墨水書房の『紫禁城の人』、筑摩書房の『魯迅伝』、砂小屋書房の『泥河』を積んである。しかし残念なことに、それらを読む取っ掛かりがなかった。この本はそれになるかもしれないという予感がして読んでみた。

友人・知人関係の回想記でもある。未読の「城外」は中国を舞台にした小説らしいので、満州枠で受賞したのかと思っていたら、同人誌歴が長い。「葡萄園」、「雄鶏」、「文藝都市」、「世紀」、「木靴」、「日本浪曼派」、「文学生活」など。「城外」は「文学生活」に掲載したもので、それを読んだ井伏鱒二上林暁川崎長太郎坪田譲治らが調査カードに書き込んだという。そのおかげで選考対象となったらしい。

同人誌ならびに阿佐ヶ谷仲間には、蔵原伸二郎、秋沢三郎(夫人の桜井浜江は太宰の「饗応夫人」モデル)、緒方隆士、田畑修一郎上林暁木山捷平川崎長太郎太宰治ら。

次に読める本が近くにあるせいかもしれないが、とても楽しめた。