報文社 田山花袋名作選

・海の上 B6版298頁
海の上、歐洲航路の船中を背景に、旅愁を帶びた大膽、捨鉢な果敢な戀が、海風の魅力と奔放とに誘はれて如何に發展してゆくか。けだし文豪花袋にして稀なる題材の力作也。

・淺い春 B6版378頁
暗澹たる人生の底を發きて作者が最も得意とする婀娜艶麗の世界を開く。數奇の運命を辿る女主人公の波瀾曲折極まりなき愛慾生活を赤裸々に剔抉して人間情愛の臭を描ける力作

・かの女 B6版236頁
愛慾小說の壓卷「蒲圖」の姉妹篇を成すもので、美貌の女弟子と作家との間にからまる咽せるが如き愛慾の絆は如何なる秘密、魅惑に充ちてゐるか。花袋文學の精粋をなす一篇。

・春雨 B6版230頁
題材を柳暗花明の巷に探り、無垢の少女が物慾・愛慾に惹かされて泥沼の如き人生に轉落してゆくさまを精細に描破す。紅燈脂粉のもと、女人の抱く哀しさは萬人の胸を打つ。

・廢驛 B6版400頁
ひっそりとした山中の廢驛、そこにも嘗て人生はあった。痺れるやうな歡樂も,燒けつくやうな妬情も秘密も疑惑も惨劇も――すべてはあった。さうして凡ては流れて行った……

・殘る花 B6版204頁
或る料理屋の女中を女主人公として中年女の爛れるやうな愛慾生活を描く。花袋が女性を見る眼の鋭さは他作家の及び難いところであり、本書は作者みづから快心作と成す一篇。

發行所 株式會社報文社
東京都神田區三崎町一丁目一番地(昭和22年)