永い夜 立原正秋

1979年9月15日第1刷 1990年1月17日第24刷 講談社文庫

収録されている短編は、以下のとおり。初出は不明。オナニー猿みたいな人ばかり出てくる。

    1. 渚通り
    2. 狂い花
    3. 曠野
    4. 双頭の蛇
    5. 永い夜

裏表紙のキャッチコピーに、こうある。

官能の行きつく果てに横たわる生の荒廃。生を支えるはずの性の力があまりにも大きく、逆に生を破壊してしまう可能性を秘めている。性の極限には死が存在する―愛欲の深淵を通して滅びの歌をうたいあげる立原正秋作品集。

「渚通り」は、芝居になってもよさそうな話。野本かりあの「自由通りの午後」という歌が表通りなら、この話は裏通りだろう。屠殺場に勤める獣医師の矢代を主人公に、置屋の売春婦、男娼、街娼、女衒。

「狂い花」は、三代に渡って私生児のピアニスト親娘が一人の男を巡って争う。

「曠野」も芝居風。画商と若い妻、そして画家との三角関係。

「双頭の蛇」は、途中から幻想的な展開となるが、性欲が満たされない妻、蛇ばかり食べている短小の夫、妻の性欲処理役の頭の悪い使用人。

「永い夜」も芝居風。戦争から帰ってこない夫。袋叩きにあう強姦未遂の大学生の息子。復讐に来た男たちに輪姦される息子の母。輪姦した男を毎晩自宅に引き込む母。男の子どもを産む母。帰ってきた夫。家を出る母と息子。輪姦した男と同棲し、その子を支えに生きる母。水商売で成功し、日々、乱痴気騒ぎに興ずる息子。男が死に、すぐ後に心臓麻痺で亡くなる母。遺体となって久しぶりに実家に戻る母。

ああ、面白かった。けれども、セックス、そして、その快感を、生きる支えにするのは、いかがなものか?と解釈できる話ばかり。

立原は、満たされない性欲を抱えて悶々としている女性の心理を上手に書いているのか?セックスがしたくてしたくてたまらない奥さんというのが、残念ながら身近にいないのだが、今だったら、オナニーですっきり、なのだろうか。ここまでセックスの話を中心にしていながら、アダルトグッズが出てこないのは、時代?