デビュー前に書かれた短編集『不自由な心』(白石一文)は悪くない
白石一文の『不自由な心』(角川文庫)は、捨てるのを躊躇ってしまった。悪くないのだ。
内容(「BOOK」データベースより)
大手企業の総務部に勤務する江川一郎は、妹からある日、夫が同僚の女性と不倫を続け、滅多に家に帰らなかったことを告げられる。その夫とは、江川が紹介した同じ会社の後輩社員だった。怒りに捉えられた江川だったが、彼自身もかつては結婚後に複数の女性と関係を持ち、そのひとつが原因で妻は今も大きな障害を背負い続けていた…。(「不自由な心」)人は何のために人を愛するのか?その愛とは?幸福とは?死とは何なのか?透徹した視線で人間存在の根源を凝視め、緊密な文体を駆使してリアルかつ独自の物語世界を構築した、話題の著者のデビュー第二作、会心の作品集。
著者あとがきによれば、デビュー作『一瞬の光』の前に書き溜めていた短編集。アマゾンのレビューワー同様、好印象を持った。リアリティを感じるのは、大半がアンハピーに終わるからか。
読み終えてから、フィリップ・K・ディックの『流れよわが涙、と警官は言った』を思い出した。どこか似ているところがあるのだろう。その似ているところは…苦さかな。