白石一文の小説はサラリーマン小説。「一瞬の光」(角川文庫)

589ページもあるが、いつものように、あっというまに読み終えた白石一文デビュー作(2000年1月)。白石の小説は島耕作だということに気が付いた。そして、読み終えてから捨てたくなる衝動も自分で納得した。コミック雑誌は読み終えたら駅で捨てているからね。

内容(「BOOK」データベースより)
三十八歳という若さで日本を代表する企業の人事課長に抜擢されたエリート・橋田浩介。彼は、男に絡まれていたところを助けたことがきっかけで、短大生・中平香折と知り合う。社内での派閥抗争に翻弄されるなか、橋田にとって彼女の存在は日増しに大きくなっていった。橋田は、香折との交流を通じて、これまでの自分の存在意義に疑問を感じ、本当に大切なことを見いだしていくのだった…。―混沌とした現代社会の中で真に必要とされるものは何かを問う、新たなる物語。

作中主人公は、社長の姪の瑠衣と付き合うのだが、白石がこの小説を上梓したころ、私自身も瑠衣という女と付き合っていたことを思い出した。サラリーマン小説は、そんなふうに1つ2つ、読者の経験と共通点をもたせなくてはならない。