白石一文を初めて読んだ:僕のなかの壊れていない部分(光文社文庫)

茶店で本を読もうと思い、駅前の本屋でたまたま手にとった『僕のなかの壊れていない部分』を購入した。駅前の本屋というのは、よく売れる本しか置いていないものだ。そこそこ人気のある作家なのだろう。

白石一文は私と同世代ということは知っていた。同世代の書くものは、大体読まなくても済んでいる。なぜなら感じ方やら疑問に思っていることやら悩んでいることが近しいからだ。

アマゾンの商品の説明にはこうある。

内容(「BOOK」データベースより)
出版社に勤務する29歳の「僕」は3人の女性と同時に関係を持ちながら、その誰とも深い繋がりを結ぼうとしない。一方で、自宅には鍵をかけず、行き場のない若者2人を自由に出入りさせていた。常に、生まれてこなければよかった、という絶望感を抱く「僕」は、驚異的な記憶力を持つ。その理由は、彼の特異な過去にあった。―生と死の分かちがたい関係を突き詰める傑作。

一気に読み通したが、引用が多いのに閉口した。

「男の人って、何をするにしてもその行動を理屈で説明しようとするのよね」

昔付き合っていた女の言葉を思い出した。それくらい理屈っぽい。

また、嘘っぽいと思わせる箇所が目立った。

例えば、3人の女の1人、有閑マダムとのセックスシーンだ。このマダム、マゾであり、主人公が攻めることでお金をもらう関係。だが、女の声は意外に漏れるもの。ラブホテルでなければあの類のプレーはできない。

ホテルの壁は結構薄い。

さて、この主人公の最も不幸なところはやはりセックスにあると思う。毎回膣内に中出ししていれば、こんなに悩むことはない。さらにいえば、そのようなセックスであっても避妊できるような関係が作れないことだ。それが「私はなぜ自殺しないのか」という悩みを生む。

読み終えてからアマゾンを見たら、昨年、「人生観を吐露した本」を出版したことを知った。本書から6年たって書かれたものだ。明日、探してみようと思っている。