白い罌粟 立原正秋

昭和46年1月30日初版 昭和55年12月20日12版 角川文庫

表題作品の『白い罌粟(けし)』は、1966年上半期の直木賞受賞作(同年下半期は、五木寛之の『蒼ざめた馬を見よ』)。他に、『刃物』『船の旅』『銀婚式』『船の翳』。

『白い罌粟』は、街金を踏み倒して暮らしている男の片棒をかつぐようになってしまった高校教師が狂っていく話。『刃物』も、街金を共同経営する男の話だ。

街金、闇金は、長らく漫画の題材になってるが、あちらの世界に躓く心理描写という点では、立原の小説は上手に書けている。漫画だとその辺りの凄みを描くのが難しいのか。漫画は連載ものばかりだからか。この2作品についていえば、躓く前提として、引力のある人物が、向こう側にいる。引力が、モノではなく、人から発せられてる。そこが時代なのかもしれないが、私は凄いと思った。

『船の旅』は、ほとんど婿養子に近いかたちで結婚してしまった総合雑誌の編集長が、浮気女房を捨てる話。『銀婚式』も、婿養子だが、開き直って、逆にうまくいく話。今となってはコメディだ。

『船の翳』は、漁師町を舞台にしているが、快楽に溺れて崖淵に立たされて「どうでもいいわ」という心境になってしまう女の心理が、ひょっとすると、よく書けてるのかも知れない。女でないので、正確なところはわからないが…。

解説によると、立原は男っぽいらしい。

「白い罌粟」や「刃物」では、躓きの世界に耐えることを求められた勇気が、「船の旅」「銀婚式」では、逆な方向に求められている。そして、この表裏の綾には、生きるに値する世界は常に男気を求める、という作者の思いが息づいていよう。(進藤純孝)

検索していたら、Goo映画に『情炎』というのがみつかった。

製作年 : 1967年
製作国 : 日本
配給 : 松竹
昭和四十一年度上半期直木賞を受賞した立原正秋の原作『白い罌粟』(新潮社刊)を、「女のみづうみ」の吉田喜重が脚色・監督した女の愛の世界を描いた異色作。撮影は「ブワナ・トシの歌」の金宇満司

http://movie.goo.ne.jp/movies/PMVWKPD22178/

どこか原作なのかわからなかった。新潮社から出版された単行本?収録作品を原作にしたということなのかもしれない。